カテゴリー: 古典文学
俳諧は捻くれ者が好む
芸香という人の句に どくだみの花も咲くらん明月院 というのがある。当人はいたって名句だと自讃しているが、これは相当捻くれ者の句だ。明月院といえば鎌倉の紫陽花で有名な寺。そこにこともあろうに「どくだみ」の花を想像する。紫陽...
成島柳北「柳北奇文」を読む10
富鬼の説(明治9年10月27日) 久しぶりの柳北について書く。 今日は朝から雨で何となく活字に向かいたくなる。梅雨だから雨が降るのは当たり前。雨の日は雨の日でいいとしよう。日々是好日なんだから。 さて、「「柳北 奇文」を...
成島柳北「柳北奇文」を読む9
先生国(明治9年9月13日) 新時代になって「先生」が大量発生したことを揶揄する。 「先生と呼ばれるほどの馬鹿じゃなし」という戯れ句があった。 「先生」という言葉は様々な意味を持つ。政治家が互いに「先生」と呼ぶのは今も続...
成島柳北「柳北奇文」を読む8
濹上の嘆(明治9年9月10日) 濹上すなわち隅田川流域の景勝地に近年訪れる人が少なくなったことを取り上げる。 しかし、この文意はそのことそのものにはないようだ。濹上に人が訪れなくなったことを嘆いているのではない。都会の人...
成島柳北「柳北奇文」を読む7
水の禍福(明治9年9月3日) 湯屋すなわち銭湯の大繁盛を書く。前半を読むと現在のスーパー銭湯ブームを彷彿させる。ほんと日本人は風呂好きである。柳北もまた風呂好きであった。柳北は言う。 「斯クノ如ク府下ノ士女争ツテ来タリ...
成島柳北「柳北奇文」を読む6
権兵衞ノ小言(明治9年8月27日) いわゆる「秩禄処分」を問題にする。 明治になって幕藩体制は崩壊する。それにともなって藩から禄をもらっていた大量の士族たちの収入は実質的に無に帰す。しかし、一気にそうなるのは相当な社会...
成島柳北「柳北奇文」を読む5
二船問答(明治9年8月25日) 実に面白い文章。「芥舩ト屋舩ト二洲橋下ニ闘フ」という形で問答が展開する。 芥舩はゴミを運ぶ船、屋舩は遊びのための屋形船だが、芥舩が屋舩に「景気はどうだ」と聞く。屋舩はここのところ全く客がい...
成島柳北「柳北奇文」を読む4
狂症の説教(明治9年8月18日) この表題が何を意味するのか詳らかにしないが、趣旨は以下の文にある。 「一郡ヲ治ムルモ一郷ヲ官スルモ同一ノ理ニテ其ノ事務ヲ総括スル先生ハ日夜勉励シテ世話ヲ焼クハ当然ノコトナレド餘リ細密ニ注...
成島柳北「柳北奇文」を読む3
東隅ノ土百姓ヲ戒ム(明治9年8月12日) こうした逆説的な文章を書かせたら天下一品ですね。 旧幕時代の御用道中に比するに「官員様ノ派出巡行」を問題にする。 旧幕時代はもうタダでやりたい放題、今の官員様は金を払っているのだ...