成島柳北「柳北奇文」を読む8
濹上の嘆(明治9年9月10日) 濹上すなわち隅田川流域の景勝地に近年訪れる人が少なくなったことを取り上げる。 しかし、この文意はそのことそのものにはないようだ。濹上に人が訪れなくなったことを嘆いているのではない。都会の人...
濹上の嘆(明治9年9月10日) 濹上すなわち隅田川流域の景勝地に近年訪れる人が少なくなったことを取り上げる。 しかし、この文意はそのことそのものにはないようだ。濹上に人が訪れなくなったことを嘆いているのではない。都会の人...
水の禍福(明治9年9月3日) 湯屋すなわち銭湯の大繁盛を書く。前半を読むと現在のスーパー銭湯ブームを彷彿させる。ほんと日本人は風呂好きである。柳北もまた風呂好きであった。柳北は言う。 「斯クノ如ク府下ノ士女争ツテ来タリ...
権兵衞ノ小言(明治9年8月27日) いわゆる「秩禄処分」を問題にする。 明治になって幕藩体制は崩壊する。それにともなって藩から禄をもらっていた大量の士族たちの収入は実質的に無に帰す。しかし、一気にそうなるのは相当な社会...
二船問答(明治9年8月25日) 実に面白い文章。「芥舩ト屋舩ト二洲橋下ニ闘フ」という形で問答が展開する。 芥舩はゴミを運ぶ船、屋舩は遊びのための屋形船だが、芥舩が屋舩に「景気はどうだ」と聞く。屋舩はここのところ全く客がい...
狂症の説教(明治9年8月18日) この表題が何を意味するのか詳らかにしないが、趣旨は以下の文にある。 「一郡ヲ治ムルモ一郷ヲ官スルモ同一ノ理ニテ其ノ事務ヲ総括スル先生ハ日夜勉励シテ世話ヲ焼クハ当然ノコトナレド餘リ細密ニ注...
東隅ノ土百姓ヲ戒ム(明治9年8月12日) こうした逆説的な文章を書かせたら天下一品ですね。 旧幕時代の御用道中に比するに「官員様ノ派出巡行」を問題にする。 旧幕時代はもうタダでやりたい放題、今の官員様は金を払っているのだ...
華謡新聞題言(明治9年8月2日) 「華謡新聞」は明治9年8月1日に風香月影社と言う所から発行された。(早稲田大学図書館のDBによればその4号が現存している。宮本千万樹 編輯とある。) 「今ヤ我社友中扼腕切歯シテ慷慨悲歌シ...
成島柳北に「柳北奇文」という著作がある。これは明治11年に西山喜内という人物によって編集され、出版されたものだが、中身はすべて「朝野新聞」の「雑録」である。 「雑録」は当時の社会の様々な現象を取り上げ、それを柳北ならでは...
敗戦日冷やしケツネをずるずると 閒村 俊一 マネキンの皺なき肌や沖縄忌 浜なつ子 原爆忌泡立つてゐるコカ・コーラ 小田中雄子 どうです。これらの句。いいじゃないですか。 これらの句は「魂の一行詩」という文で角川春樹氏が紹...
柳北は幕府の奥儒者です 前回の終わりに書いたが、この書の作者成島柳北は江戸時代の奥儒者だった。この書は安政六年一八五八年に書かれたと言われている。二十三才である。二十才で奥儒者となり、将軍に書を講じている。もちろん儒教の...