漱石大全読了

最近読書はもっぱらkindleでやっている。字の大きさを変えることができるし、明るく軽いので実に重宝だ。
今日、そのkindleで夏目漱石大全を読了した。
漱石は嘗ての国文学徒の習いとして学生時代主要な小説類は読了していたし、卒業後も時に応じて幾つかの作品は再読してきた。
そして今回漱石生誕100年とかで世間でとりあげたこともあってもう一度読む気になった。
しかもAmazonがKindle版で122作品を「漱石大全」として出版して、手軽ということもあって取り組んだわけである。
取り組んだとはちとオーバーだけれど、ほとんど昼寝や就寝まえに寝転がって読んだに過ぎないが実に半年を要してしまった。
Kindleによれば平均的に読了まで107時間を要するらしい。一日1時間としても3ヶ月以上は要する計算になる。ということは一日30分しか読んでなかったことになる。
こんな計算はいかにもIT読書ならではである。しかも漱石は著作権が切れているので、青空文庫を基にしたこのKindle版は200円という価格である。実に安い暇つぶしである。

さて、そんなことはさておき、今回漱石を読み直して思ったのは嘗て漱石作品で一番だと思っていた「こころ」が意外につまらなく感じたこと、また「明暗」が嘗てはそれほどとは思っていなかったのに、これまた意外に面白く読めたことだ。
さらには漱石は小説より談話や講演が実に面白いということ。批評家として優れているということ。などなど改めて感じたことだ。
これは読む方の年齢と言うのが関係していると思う。ここら辺りをしっかり考えるとなにかまとまったことが言えるかもしれない。

もう一つ。執筆年不詳ということでこのKindle版で最後の方に載っていた「自転車日記」というのが実に秀一だった。これはロンドンで自転車に乗る練習をした時のことを書いたものだが、この文章こそ漱石の真骨頂のような気がした。
成島柳北にも通ずる達意の文章だ。読んでみてちょ。

収録作品を以下五十音順に示す。(Kindleでは年代順に載っている。)

イズムの功過
一夜
永日小品
岡本一平著並画『探訪画趣』序
思い出す事など
カーライル博物館
薤露行
学者と名誉
硝子戸の中
元日
木下杢太郎著『唐草表紙』序
教育と文芸
京に着ける夕
虚子君へ
草枕
虞美人草
ケーベル先生
ケーベル先生の告別
現代日本の開化
行人
坑夫
『心』広告文
『心』自序
『心』予告
こころ
琴のそら音
コンラッドの描きたる自然について
作物の批評
三山居士
『三四郎』予告
三四郎
子規の画
子規の畫(旧仮名)
「自然を寫す文章」
自転車日記
写生文
趣味の遺伝
初秋の一日
処女作追懐談
人生
鈴木三重吉宛書簡―明治三十九年
西洋にはない
戦争からきた行き違い
創作家の態度
『それから』予告
それから
それから(旧仮名)
高浜虚子著『鶏頭』序
田山花袋君に答う
『土』に就て
艇長の遺書と中佐の詩
手紙
『傳説の時代』序
点頭録
『東洋美術図譜』
道楽と職業
「土」に就て
長塚節氏の小説「土」
中味と形式
二百十日
入社の辞
猫の広告文
野分
『煤煙』の序
博士問題とマードック先生と余
博士問題の成行
長谷川君と余
彼岸過迄
「額の男」を讀む
文芸委員は何をするか
文芸と道徳
文芸とヒロイツク
文芸の哲学的基礎
文芸は男子一生の事業とするに足らざる乎
文士の生活
文壇の趨勢
文鳥
変な音
變な音(旧仮名)
僕の昔
坊っちゃん
マードック先生の『日本歴史』
正岡子規
幻影の盾
満韓ところどころ
道草
無題
明暗
明治座の所感を虚子君に問れて
模倣と独立

夢十夜
余と万年筆
予の描かんと欲する作品
落第
倫敦消息
倫敦塔
私の経過した学生時代
私の個人主義
吾輩は猫である
『吾輩は猫である』上篇自序
『吾輩は猫である』中篇自序
『吾輩は猫である』下篇自序
吾輩ハ猫デアル 旧仮名(序文・第一のみ)

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