『日本古典文学総復習』18『落窪物語』『住吉物語』

『落窪物語』『住吉物語』を読む

この二つの物語は日本版シンデレラストーリーの古典だ。継母に預けられいじめられた美しい姫君が理想的男性に見出され幸せになると言うお話だ。

『落窪物語』は具体的にはこんな展開だ。

高貴な身分の姫君が母を亡くしたために、継母に預けられる。当時は母系性社会だから娘は母親の元で暮らすことになるのだが、その母がいないため継母の家で暮らすこととなった。その継母が典型的な意地悪女となっている。姫はこの継母にいいようにこき使われ、しまいにはとんでもない部屋に監禁される。しかし、その美貌に惚れ通い始めた男性が登場。右近の少将道頼という。これがまさに理想的な男性。しかも当時の男性像というより、現代の理想的な男性像だ。その後も姫君は継母のいじめに遭うが、この男性がそこから姫君を救い出す。ただそれだけでなく、継母への復讐までやってのける。そしてそのかいあってか、二人は社会的にも出世し、幸福になるというわけ。

また、こうした話が様々な事件、そこに登場する様々な人々によって彩られる。特に姫君を助ける侍女「あこぎ」という人物はこの物語で重要な役割を果たす。姫君は謂わば人形のような存在だが、この侍女は生き生きと描かれる。こうしたところがこの物語を奥深いものにしている。

それに対し『住吉物語』は分量から言っても『落窪物語』に比較にならないほど短いものだ。内容的には似ているが、『落窪物語』にある救出劇や復讐劇はない。また、奥行きも貧弱だ。しかしこの物語は後の時代によく読まれたようだ。異本が多く存在するし、絵巻物にもなっている。また、初瀬にこもって夢のお告げによって幸せになるきっかけをつかむといって点も違っている。また、かなりの後に書き換えられた形跡があるようだ。

しかし、継子いじめの話は洋の東西を問わず色々って、それだけ人々の興味を引く話であったことは間違いない。ただ、現在はあまり聞かない気がする。「いじめ」や「虐待」の話は多く聞くが、現代では実母や実父、あるいは継父が関わっていることが多いような気がする。これは当時の婚姻形態と現在のそれとの違いが要因としてあるが、その実態は昔の方が穏当であった気がする。この物語での「いじめ」や「虐待」は現在のそれに比べればそれほどでもない。現代がむしろ暴力性を増しているといえる。これは家族のあり方の違いもあるのかもしれない。現代の家族は極めて孤立しているから暴力性を増すのかもしれないからだ。またこの物語には、登場人物が貴族階級という点もあるが、「いじめ」られる人物には協力者が必ずいるということも注目される。それがこの話をそれほど暗くしていない。侍女の活躍などがそれだ。

さて、この二つの物語は平安時代に成立したと思われるが、『源氏物語』にも影響を与えたらしい。特に『落窪物語』は物語の筋が語られるだけでなく、具体的な事実描写が多く、会話文も多く、こうした謂わば本格的な小説ともいえる物語がその時期に成立していたことは驚きに価する。

ネット上に面白いサイトがあった。『落窪物語』に登場する侍女「あこぎ」という人物に着目してこの物語をわかりやすく紹介している。
以下だ。ぜひ読んでもらいたい。
http://ncode.syosetu.com/n8281bb/ 「あこぎ」という名脇役 ~落窪物語感想文~

なお、現代語訳で読むには
落窪物語〈上下〉 (角川ソフィア文庫) 文庫 – 2004/2 室城 秀之 (翻訳)
がある。
また、漫画版は
落窪物語―マンガ日本の古典 (2) 中公文庫 文庫 – 1999/6 花村 えい子 (著)
があり、わかりやすいかもしれない。
また、謂わば翻案だが、田辺聖子氏の
おちくぼ姫 (角川文庫) 文庫 – 1990/5/25
がいいだろう。
ぜひ読んでもらいたい物語だから紹介した。

この項了

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